第2話 「神さんのいる山のふもとで」 南都銀行 松村支店長

吉野ネハホリ

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第二話 松村 篤樹さん

「神さんのいる山のふもとで」


松村さんは、吉野町上市にある南都銀行の支店長さんです。遠くからその姿を拝見することはあったのですが、じっくりお話するのは今回がはじめて。

「銀行マン」というイメージから「びしっとしてそう」「威厳がありそう」など、あれこれ勝手な想像が膨らみます。なんとなくそわそわしながら、銀行へと向かいました。


出迎えてくれた松村さんは、なんとも物腰やわらか。表情豊かにあいづちを打ちながら、時おり「わはは」と声をあげて笑う姿が印象的です。

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―― こちらに赴任して、どのくらいになるんですか。

 松村さん:1年とすこし経ちました。


―― 昨年の秋、吉野まつりのステージで「マジックショー」をされているお姿を拝見しました。地域の行事に、積極的に参加されていますよね。

 松村さん:せっかく上市に来たのだから、吉野のことをもっと知りたいなと。行員のみんなに声をかけると、気軽に来てくれるので。一緒にいろいろと参加させてもらっています。


―― ふむふむ。個人的に気になっていたのですが、マジック歴は長いんですか。

 松村さん:そうですねえ。妻のおじいさんが、手品好きだったんです。結婚してから師弟関係を結ぶような感じで、いろいろ教えてもらって。一緒にNHKのお昼の番組に、出演したりもしましたよ。


―― 長いキャリアですね!驚きました。続いて、お仕事について伺いたいと思います。仕事をするうえで、大切にされていることはありますか。

 松村さん:モットーは「明るくたのしく、仕事は厳しく」です。

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―― 時には、自ら駐車場に立って交通整理をされるそうですね。周囲に競合店が少ないのに、一体なぜそこまで。

 松村さん:競合が少ないからこそ、しっかりサービスをしていきたいですね。銀行は金融業であると同時に、サービス業でもあると思うんです。「自分がお客さまやったら」ということをいつも頭に置いています。


―― シンプルかつ明快です(感心)。「支店長」というお仕事は、どのようなものなんでしょうか。

 松村さん: いろいろありますが、「人を育てる」ことが自分の使命だと考えています。人脈やノウハウを、しっかりとバトンタッチしていく。とにかく、みんなのことをじーっと見て。ずーっと見て。時には先回りして、アドバイスしたりします。


―― 厳しさのなかにも、すごく人間っぽい温かさを感じます。ええと、私事なんですが…。仕事で壁にぶちあたることが多いのですが、そういう人に対してはどう接するんですか。なんか、お悩み相談みたいになってすんません…。

 松村さん:ええとね。大切なのは言い続けることです。同じことを、言葉を変えて言い続ける。一回言うて、分かる人間はいないですからねえ。


―― (しばし黙り込む)。すみません。素晴らしい言葉ですね。

 松村さん:繰り返し、繰り返しね。根負けせずに言いますよ。


―― ありがとうございます。相手に通じるまで言い続ける。ほんとに感動しました。お住まいはお隣の宇陀市と伺いましたが、通勤はどうされているんですか。

 松村さん:電車で通っていますよ。


―― ええ(驚く)!ずいぶんと時間がかかるのでは。

 松村さん:そうですね。だいたい1時間半くらいかかります。車だと30分なんですけどねえ。


―― なぜまた、わざわざ。

 松村さん:考える性分なんですよ。考え事をしていると、運転がお留守になるので(笑)。電車の中では本を読んだり、メモをまとめたり。頭の中を整理する大切な時間になっています

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う~ん素晴らしい。しかし、しかし「ほんとにこんな上司いるのか」「まさか嘘ついていないですよね」、誇大広告お断りとばかりにざわめく取材班。

ということで、ここからは松村さんにはすこし席を外してもらい、窓口業務を担当されている山口さんにお話を聞きします。

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―― 率直に伺いますが、支店長と一緒にお仕事されてどうですか。

 山口さん:厳しいけれど、いつも的確なアドバイスをくださいます。あと、常にみんなのことをよく見てくださっているなと感じます。ちょっとした表情を読み取って、助けてくださったり。


―― なるほど。お話の通りですねえ。みなさんで旅行にも行かれるとお聞きしましたが。

 山口さん:はい。旅の計画からバスの手配まで、支店長がやってくださるんですよ。
あとは、毎月みんなで誕生日会をしていますね。わいわいとケーキを食べます。

―― 本当に仲がいいんですねえ。ここだけの話、上司としての松村さんになにか不満とかありますか(小声)。

 山口さん:うーん、不満ですか…。(しばらく考え込む)。


―― 支店長には、内緒にしておきますので(さらに小声)。

 山口さん:すみません、どうしても思いつきません…。


―― すごいなあ。上司としても、村松さんは、最高の方なんですね。

 話の裏がとれたところで、再び松村さん登場。

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―― 山口さんからお話を伺って、「ひとを驚かせたり、楽しませたりするのがお好きなんだなあ」という印象を改めて受けました。

 松村さん:昔から「笑かしたろ」とか、「びっくりさせたろ」とか。そういうのは好きですね。小学生のとき、友達の誕生日会でひとり漫談をした記憶があります(笑)。


―― 生粋のエンターテイナーですね(笑)。

 ここで、みんなそろって2階の食堂へ。ここには、松村さんの蔵書を集めた文庫スペースが設けられています。そのラインナップからは、ひとつの支店を経営する「経営者」としての感覚がうかがえます。

松村さん:ふだんから、いろいろな本を読むとええよということは言っています。「僕の本読んでええよ。よかったら」という感じで。

山口さん:今日、この本を借りましたよ。すごく面白かったです。

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三輪山のふもとから、吉野山のふもとへ。「なんだか、山にいはる神さんに守られてるような気もします」と語る松村さん。

毎月恒例の誕生日会。いざ自分がお祝いしてもらったときには、思わず涙してしまったといいます。「感動しい」であること。それこそが、多くの人の心を惹きるける秘密なのかもしれない。そんなふうに感じました。

(おしまい)

2013年1月24日 取材・ノリ/ノブ/ナオ 文・ナオ

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