第1話 カリフォルニアから吉野へ ボニーク・ルーカスさん

吉野ネハホリ

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みなさん、はじめまして。

このコーナーでは、「吉野に移り住んだひと」の今を紹介していきます。

かくいう私も、ぴかぴかの町民1年生。

山を照らす朝の光を見ると、「吉野で暮らしているんだな」と実感します。

移住のきっかけから、誰かに教えたくなる風景、いま困っていることまで。

吉野で暮らして思うことを、ゆるりとうかがっていきます。

目標は20人。

一つ一つの物語、お楽しみいただけるとうれしいです。

 

第一話 ボニーク・ルーカスさん

「合気道とヤキトリと」

 

ルーカスさんにはじめてお会いしたのは、11月初旬のある夕方でした。

扉をがらがらと開ける音。「はじめまして」と丁寧に頭をさげる姿。

身にまとった柔らかい雰囲気を目にして、緊張がほどけていく感じがしました。





生まれ育ったのは、アメリカのカリフォルニア州。

現在は、町内の学校でALT(外国語指導助手)として子どもたちに英語を教えています。

取材の日で、ちょうど引っ越しから2ヶ月と2週間。

そんなルーカスさんに吉野での暮らしについて聞きました。

 

—— 「吉野町」の第一印象はどうでしたか?

 

ルーカスさん:木に恵まれているなという印象でした。わー、すごいところに来ましたねって(笑)。でも、前にどこかで見たことがある風景で…。

 

—— 「懐かしさ」みたいな感情もあったのでしょうか。この場所を選んだのには、何か理由があるのですか?

 

ルーカスさん:ええと、最初は水戸を希望していました。

 

—— 茨城ですか(驚く)。なぜまた水戸を?

 

ルーカスさん:こちらに来るまで宮城に住んでいたので、関東方面を希望しました。霞ヶ浦(かすみがうら)に惹かれたのと、納豆の本場なのと。

 

—— 霞ヶ浦というと、あの大きな湖ですよね。霞ヶ浦と納豆か…。ふむふむ。

 

ルーカスさん:あと、岩間(茨城県笠間市)に合気道のルーツがあるというのも理由のひとつです。自然が豊かなところを希望していたので、吉野に配属になったと思います。





ひょんなご縁から、吉野にやってきたルーカスさん。

会話を続けるうちに、「合気道」という言葉が浮かび上がってきました。

学生時代から続けていて、今も下市町の道場で稽古に励んでいるといいます。

 

—— 武道にもいろいろありますが、なぜ合気道だったのですか?

 

ルーカスさん:はじめて見たのは、テレビの武道特集でした。人を傷つけるのはすごく嫌なので…。(相手を打ち負かさない合気道は)自分に最も似合うなと思いました。

 

—— なるほど。その精神性がしっくりくるなと。

 

ルーカスさん:「あの人もこの人も、自分だ」。そう思って向き合います。だって、自分も誰かにやさしくされたいでしょ。

 

― ものすごくシンプルだ(感心)。立つ位置をすこしずらすだけで、見える世界は変わるんですね。

 

身振り手振りを交えながら、一つ一つ言葉を選んで話す。

その姿はなんだか哲学者のようでもあり、思わず話に引き込まれてしまいます。





― 「日本の文化」に対するイメージというのは、なにかありますか?

 

ルーカスさん:うーん、「深くて長い」です。「美術」、「武道」、「テクノロジー」。いろいろな面があって、「hodge podge(まぜこぜ)」になっているのが面白いと感じます。

 

—— 話題を少し変えて。この町で、でいちばん好きな風景はありますか?

 

ル―カスさん:ベランダから見る、サンセットが好きです。いままでの夕日は海に沈んでいましたが、吉野では川に沈んでいきますね。だんだんと空が紺色になっていくところがきれいです。

 

—— 吉野の夕暮れは美しいですよね(大きくうなずく)。それでは最後に、いまお気に入りのお店があれば教えてください。

 

ルーカスさん:ええと、赤影です(大淀町にある、雰囲気あるヤキトリ屋さん)。

 

—— おお、すごい!渋すぎます。

 

ルーカスさん:ふふふ。お店の雰囲気とおじさんが、いい感じですね。

 

—— 玄人好みですねえ。もう長いこと住んでいる人のセレクトですよ(笑)。





日本語を学んで9年目になるルーカスさん。

大学では東アジアの言語文化とともに、「宇宙物理」を専攻されていたそうです。「宇宙のはじまり」を求めるように、「心の奥にある景色」を見つめる姿が印象に残りました。

まっすぐに合気道の魅力を語る姿、楽しそうにヤキトリの美味しさを語る姿。

その2つのバランスが、とても人間的でチャーミングだと感じました。

 

(おしまい)

2012年11月6日取材

取材と文章は奈央ちゃんです。

 

 

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