内田康夫「天河吉野殺人事件」①

吉野を訪れた文人

桜花壇

内田康夫さんのサスペンス小説で、ルポライターの浅見坊っちゃんが出て来て事件を解決していくシリーズ本があり、その中の「天河伝説殺人事件」があります。この本はTVや映画にもなり、この中で描かれている吉野の綺麗な景色や物語も紹介してみましょう。

・・・十一月八日、浅見は吉野に入った。

吉野は歴史の古い土地である。『古事記』や『日本書紀』の応神天皇のあたりから、ぼつぼつ吉野の名が散見する。大化以降には離宮まで出来たという説もある。『天智十年紀』に「大海人皇子が吉野に入って仏道を修業した」という記述がある。壬申の乱の際、大海人皇子は大津の宮から僧衣をまとって逃れ、吉野入りした。大海人皇子はその翌年、吉野で挙兵し近江朝廷を滅ぼして即位し、天武天皇となる。爾来、吉野は政治、宗教の上の大きな出来事のつど、重要な拠点としてその名を歴史に止めることになる。国道を右折して吉野川を渡り、七曲りの急坂を登ると吉野山の中心街に入る。窓を開けると、空気がひんやりと感じられた。十一月も半ば近くともなると、吉野山は早くも冬の気配が漂い、訪れる数がめっきり減ってしまうのだそうだ。吉野山の宿は「桜花壇」にせよという出版社の指定があった。・・・

スマイルバス停は中千本です。

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