瀬戸内晴美「古都旅情」

吉野を訪れた文人

瀬戸内晴美さんの「古都旅情」(昭和54年)で描かれている吉野です。

今は瀬戸内寂聴となっておられますが、昔は瀬戸内晴美さんでした。

・・・あの旅の困難な時代に、芭蕉が数年もたたず、二度も吉野の西行庵を訪れているということは、芭蕉の並々でない西行への傾倒ぶりがうかがわれる。

 旅に行き、旅に死す事を憧れ、生きる事とは美神に自己を殉じさせることだと見極めていた隠世者に共通の感慨が、芭蕉を西行に惹きつけていたのだろう。

 西行も芭蕉も無常を見極めていたし、すでに生死の秘密を会得していたように思われる。人より多感な、濃い情の持ち主であるが故に孤独を求め、それに耐え得られるのであり、人と棲む妥協に自分を許せず需めて放浪の旅に出発するのである。・・・

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