「十六夜に吉野の物語を聴く会」吉野葛① 六田

吉野中央部 上市周辺

『吉野葛』で始まるのは六田駅です。谷崎が来た頃は昭和3年以前でしたので、六田駅が当時の吉野駅でした。物語はここに降り立つところから始まります。「吉野口で乗り換えて、吉野駅まではガタガタの軽便鉄道であったが、それから先は吉野川に沿うた街道を徒歩で出かけた。『万葉集』にある六田の淀。柳の渡しあたりでは道が二つに分かれる。右に折れる方は花の吉野山へかかり、橋を渡ると直に下の千本になり、関屋の桜、蔵王権現、吉水院、中の千本と、毎年春は花見客の雑踏する所である。私も実は吉野の花見には二度来た事があって、幼少の折上方見物の母に伴われて一度、そののち高等学校時代に一度、やはり群衆の中に交わりつつこの山道を右に上がった記憶はあるのだが、左の方の道を行くのは初めてであった。近頃は、中千本へ自動車やケーブルが通うようになったから、この辺をゆっくり見て歩く人はないだろうけれども、むかし花見に来た者は、きっとこの二股の道を右へ取り、六田の淀の橋の上に来て、吉野川の河原の景色を眺めたものである。御陰さまで当日は満席となりました。

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