第八話 林業家 梅本正敏さん

吉野なひと 50人

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第八話 林業家 梅本正敏さん

~寝ても覚めても山のことばかり~

吉野で山の仕事をする人を「山行き」と呼びますが、今回登場して頂く梅本正敏さんもその山行きさんのお一人です。
第三話に登場して頂いた中神木材の中井章太さんと同じで、お話の端々に吉野の山への深い思いが伝わってくる方です。
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なにより印象的なのが、話の折々に登場してくる
「寝ても、覚めても山のことばかりですわ」
という言葉。
「吉野林業高等学校を卒業してから、山仕事一本です。
偉い大学の先生が一杯教えに来てくれてましてな。
林業の大切な事はすべて教えてもらいました。
それからは、寝ても覚めても山のことばかりですわ」
「寝ても覚めても山のことばかり」と語られる梅本さんの口調は、毎回少し恥ずかしそうです。

昭和5年生まれの梅本さんは小柄な方です。
「おてんとうさまが出ているときにゆっくりするのは申し分けない、それに休んどったら退屈な」
とおっしゃる通りに、山仕事以外にも絶えず身体を動かしている方です。
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お昼時のちょっとした時間も庭の手入れをかかしません。そのため梅本さんのお庭には季節を通じて美しい花が咲いています。

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季節を通じて美しい花が咲いている梅本さんの庭

おじゃましてまず最初に、家から地続きの山を案内していただきました。
小さな谷に沿って歩くと、良く手入れされた木々の間に明るく光の入るとても気持ちの良い山林が広がります。
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どの木を伐採すると残った木がうまく育つか。
そのために、今、どんな作業をするのか。などなど。
ぽつりぽつりと言葉を選んで語られる口調からは、山を育てることが生きることとなっている梅本さんの誠実さが伝わってきます。
梅本さん「高城山の下にある山(林)を見に行きましょう」
ノブ  「どんな山ですか」
梅本さん「林相がいいんです、人に人相があるように、山にも林相があるんですわ」
なるほど、高城山の下の木を見ると、大人しく素直に育っている感じがします。これを「林相がいい」というのかと納得しました。
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ノブ「梅本さん、いい木とはどんな木ですか」

梅本さん「通直、無節、そして障子の桟に5本くらいの年輪がかかるのがいいですわ。最初からそのように育てなあきませんなあ」
ノブ「この山は理想に近いですね」
梅本さん「これではまだまだですわ」
この「これではまだまだですわ」も口癖の一つです。

「寝ても、覚めても山のことばかりですわ」と「これではまだまだですわ」が梅本さんの原動力になっているようです。

梅本さん「ここの木は、実生から育てました。勢いのある木(盛木)から取った実を育てて苗にしたんです」
ノブ「挿し木と違うのですか」
梅本さん「雪に強いですな、粘りがあります。勢いのある木に登ってもらって実を取るんですが、実から苗を育てるのに3年掛かります。」
梅本さん「いい木から取った実で育てると、いい木ができます。木すじが違います。育ちのいい木は、姿もよくて、大人しいです」

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昔は、林業の盛んな吉野町には大勢の山行きさんがいらっしゃったそうですが、現在は、少なくなってしまったそうです。

梅本さんは、高城山にある16町歩の山以外にもたくさんの山を持っておられますが、それらをほとんど一人で手入れされています。
小柄なお身体のどこにそのような力が秘められているのでしょうか。
お伺いすると山での大きな怪我なども、ほとんどされたことがないそうです。

林業では植林・下刈・枝打・除伐等の作業を「撫育(ぶいく)」といいますが、梅本さんの山への係わり方は、「撫育」そのもののように感じました。
木を愛おしみ、撫でるように育てる。
吉野材の素晴らしさは、山が造ってるのではなくて、山と人が共同で造っているということを改めて認識しました。
この山への誇りと思いを未来にどう託すのか、吉野の人たちが本気で考える時期が来ているようです。

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ほぼ終日、梅本さんから面白いお話を聞かせて頂きました。
取材に協力して頂き本当にありがとうございました。

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