神々の乱心③

吉野中西部 中荘・国栖方面

大海人窪垣内2

松本清張遺作の「神々の乱心」は、昭和の始めの新興宗教をテーマにした小説で、タクシーで上市から宮滝に。そして国栖に入る時の描写もあります。・・・宮滝遺跡を東へ過ぎると吉野川は急激な曲がりで蛇行していた。県道も宮滝で二つに分かれ、一つは北上して大宇陀から榛原方面へ行き、あと一つは南下して川上村を通り、紀州の熊野地へ向かう。急なカーブを繰り返すこのへんの吉野川は、南北から突き出る山地に挟まれた渓谷で、おりから深山の植物は紅葉が早く進み、渓流にそれが映えて美しかった。大きな曲がり角を過ぎると羊腸たる道もそれが最後で、展望はにわかに開けた。川も道路もまっすぎになり、山々は遠近に峰を重ねているけれど、沿岸は小盆地のように広く、白壁の民家がにぎやかに集まっていた。「ここが国栖だす」運転手はいった。奥の方は農家ばかりだが、道路沿いは店が多く、その店先には「国栖紙」の名で和紙を何束かに包装したものを売っていた。「ここの国栖紙は、障子紙や襖紙や掛図の裏打紙なんぞには第一級や、いうて有名だす。薄い吉野紙とはまた別でんね」と語っている。今でもタクシーの運転手はこのように語ってくれているのでしょうか。

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