谷崎潤一郎の「吉野葛」②

吉野を訪れた文人

上市町並み

「吉野葛」では上市の町のことを、このように紹介しています。

 

・・・奈良を立ったのが早かったので、われわれは午少し過ぎに上市の町に入った。街道に並ぶ人家の様子は、あの橋の上から想像した通り、いかにも素朴で古風である。 (中略)  歩きながら薄暗い格子の奥を覗いて見ると、裏口まで土間が通っていて、その土間の入り口に、屋号や姓名を白く染め抜いた紺の暖簾を吊っているのが多い。 (中略) 恐らくこの辺りの家は、五十年以上、中には百年二百年もたっているのがあろう。が、建物の古い割りには、何処の家でも障子の紙が皆新しい。今貼り替えたばかりのような汚れ目のないのが貼ってあって、ちょっとした小さな破れ目も花弁型の紙で丹念に塞いである。それが澄み切った秋の空気の中に、冷え冷えと白い。 (中略) 一つは誇りがたたないので、こんなに清潔なのであろうが、一つはガラス障子を使わない結果、紙に対して都会人よりも神経質なのであろう。 (中略) とにかくその障子の色のすがすがしさは、軒並みの格子や建具の煤ぼけたのを、貧しいながら身だしなみのよい美女のように、清楚で品よく見せている。・・・

スマイルバス停は役場前です。

« »